2025/08/09 18:55



今回はハナガラヤモリ〈mimamo〉シリーズのおはなしを。

まずは〈mimamo〉という名前。

既に察しがついている方もおられるかとは思いますがあえてご説明させていただきますね。

〈mimamo〉は〈見守る〉から“る”を除いてローマ字表記にした名前です。このシリーズの得意技は見守ること。という設定から生まれてきています。

そもそも“やもり”は日本人が好きな語呂合わせにぴったりなのです。漢字にすると“家守”でその字の如く家を守るという意味です。家に災いする害虫を食べてくれたりするので日本では縁起の良い身近な生き物なのです。中国では“守宮”と書かれて故事に由来する宮中の女官を守るという伝承もあるそうな。

ハナガラヤモリを作り始めたきっかけは“縁起のよい小さな生き物”をコンセプトにした企画展への参加でした。

当時のわたしはやっとどうにかこうにか“これからも生きる”を実感した頃でした。

手術を終えて始まった抗がん剤治療はことのほかきつくて、何度か意識がなくなりお医者に“この薬が効かなかったらダメですね”って目を合わせることなく言い放たれることが続きました。抗がん剤治療自体がスケジュール通りには進まず半年でクリアしないといけなかったスケジュールは11ヶ月かかり、間髪いれず放射線治療の日々。フルコースと言われた一連の治療を終えてやっと作り始められる!とバンザイした時に声をかけてもらったのが“縁起物展”という縁起のよい小さな生き物をコンセプトにした企画展でした。

今まで作っていなかった立体作品に挑戦してみたら?と声をかけていただき、手術前の自分だったら“苦手分野”だからと間違いなく断っていたけれど、ある意味身体中の全細胞が劇薬(抗がん剤)で強制的に生まれ変わった(髪の毛とか数日で抜け落ちたし)んだから挑戦したい!と参加を決めて“縁起の良い生き物”を想像した時に最初に思いついたのが“やもり”だったのです。

小さな頃から動植物何でも大好きでした。とくに身近な小さな生き物は大好きでやもりやカナヘビ、アマガエルにカタツムリ、てんとう虫など遭遇したらとりあえずそぉっと近付いて撫でてしまう。

大好きで身近なコの中で縁起の良いコの中から“やもり”をチョイス。

立体制作の基礎や知識がないので、遭遇した時に撮っておいた写真や飼っている方からいただいた写真を拡大してみたり図鑑で骨格や関節のむきなどを調べたりしながら試行錯誤を繰り返し少しずつ進んで、“縁起物展”では8体出展することができ、その時のコ達はみんな優しいお家へとお迎えいただきました。

“縁起物展”からもうすぐ6年です。やもりを作っていなかったら今の猫の目工房はなかったかもしれません。最初のやもりたちから少しずつ進化をしていて現在生まれてくるコたちは優しい誰かを見守る視線をさりげなく送り続けるコ達となりました。

シリーズ名のように目の前の優しいあなたをいつでも見守る〈mimamo〉をよろしくお願いいたします。